夜行 ── 深夜営業の喫茶店
ブランドリニューアル
深夜0時〜朝5時だけ開く、東京都内6店舗の老舗喫茶店チェーンのブランド再構築。ロゴ・サイン・メニュー・グッズ・公式サイトを一気通貫で。
プロジェクト情報
01背景と課題
夜行は、1978年創業の都内6店舗を構える深夜営業の喫茶店チェーン。深夜0時から朝5時までの "他にない時間帯" だけを切り取った独特な業態で、長年地元客に愛されてきた。しかし、ここ数年は若い世代の来店減少に頭を悩ませており、創業者の引退を機に "次の世代に手渡せるブランド" へ刷新することが決まった。
初回のヒアリングでオーナーが繰り返し口にしたのは、「深夜の時間が好きな人は、実は今もたくさんいるはず」という言葉だった。問題は店ではなく、その時間の魅力を伝える "言葉" と "形" が古びていることだった。
02コンセプト
3週間のリサーチと、深夜2時の店舗7時間張り込みを経て、私が辿り着いたコンセプトは 「夜は、もう一つの東京」 だった。深夜の街は、昼間の街とは別の人格を持っている。来る人も、流れる空気も、聞こえる音も違う。その "別人格としての東京" の入り口に、夜行の喫茶店がある。
夜は、もう一つの東京。 その入り口に、夜行はある。 — ブランドステートメント
03ロゴデザイン
ロゴは「夜」と「行」の二文字を、深夜の街灯に映る影のように非対称に配置した。書体は、明朝体のクラシックさと、コンテンポラリーなエッジを併せ持つよう、既存の本明朝Pr6Nをベースに約180箇所のオプティカル調整を加え、専用ロゴタイプとして再描画している。
カラーパレット
パレットは深夜の色彩から抽出。ベースは "深夜0時の空" を表す純黒(#0A0A0A)、アクセントに街灯のオレンジ(#FF6B26)、強調に夜明け前の藍(#1B2D5E)。3色だけのストイックな構成で、店舗ごとの個性は素材とサインの大きさでつくる。
04サイン計画と店舗展開
各店舗の入口には、深夜にだけ点灯する "夜行ランプ" を設置。0時に光が灯り、5時に消える。看板を読まなくても "今は夜行が開いている" ことが分かる、視覚以前のサインとして機能する。
- 夜行ランプ(深夜のみ点灯する独自照明、6店舗それぞれ異なる位置に)
- 店内サインは反射素材で印刷し、街灯の光だけで読めるよう設計
- メニューは "夜のフォーマット" として、白地ではなく深いネイビー紙に金とオレンジで印刷
05結果と振り返り
ローンチから3週間で、客層に明らかな変化が出た。20代後半〜30代前半の新規客が前月比 +184%、SNSでのメンション数は ×12倍。何より嬉しかったのは、長年通っている常連が「やっと夜行が、夜行らしくなった気がする」と言ってくれたこと。
— Special Thanks: 株式会社夜行・田中泰樹さま、撮影: 中沢誠、コピー: Yusuke Fujiwara、施工: 江戸サイン
コメント (89)
提案の構成が完璧すぎて、お手本にしたいです。最終のロゴ案、シリーズで展開できそうですね。深夜限定のメニューシリーズとか、見たい…!
"夜は、もう一つの東京" の言葉が刺さります。デザインの仕事って、ステートメントの一行で全部決まるんだなと改めて。
あなた、ありがとうございます!ステートメントを書ける瞬間を待つの、けっこう時間使ってしまうけれど、これがないと何も決められないですよね。
サインの "夜行ランプ"、めちゃくちゃいい施策。看板を読まなくても伝わる、っていう一段上の発想が好きです。実際に店舗行ってきます🚶
本明朝Pr6Nをベースに180箇所のオプティカル調整って、どれくらいの時間かかったんですか?自分の本明朝が好きすぎて、聞きたくなりました。